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仙台高等裁判所 平成元年(ラ)87号 決定

抗告人 中根トリ

主文

原審判を取消す。

抗告人の名「トリ」を「幸子」と変更することを許可する。

理由

1  本件抗告の趣旨及び理由は、別紙即時抗告申立書の「抗告の趣旨」、「抗告の実情」の各写し記載のとおりである。

2  本件の事実関係は、原審判の1枚目裏4行目から同2枚目表3行目までのとおりであるから、これを引用する。

3  上記事実によれば、抗告人は昭和25年ごろから「幸子」を通称名として使用するようになり、昭和48年ごろ飲食店に勤務するようになってからは、その勤務先で上記の通称名を使用し、また金融機関の預金通帳などにも通称名を使用しており、永年にわたり社会生活を営むうえで通称名を使用してきたことが認められ、この事実と提出された資料によれば、通称名が戸籍名に代って抗告人を表象する機能をもつに至っていることが認められる。

4  抗告人が通称名を使用するに至ったのは、上記2のとおり戸籍名に対する主観的な悪感情と姓名判断によるものではあるが、すでに通称名が永年にわたって使用され、これが戸籍名に代って社会生活上本人を表象する機能をもつに至っている以上、通称名使用の動機が上記の如きものであったとしても改名を許可するのが相当である。なお、抗告人は昭和61年5月2日福島地方裁判所において破産宣告・同時廃止の決定を受けているが、昭和62年4月21日免責許可の決定を受けているので、この点においても、改名許可の妨げとはならないものと考えられる。

5  よって、抗告人の申立を却下した原審判を取消し、抗告人の名の変更申立を許可することとして主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 糟谷忠男 裁判官 渡邊公雄 後藤一男)

(別紙)

抗告の趣旨

原審判を取り消し、本件を福島家庭裁判所に差し戻すとの裁判を求めます。

抗告の実情

昭和48年頃家計の都合によりまして約2年位飲食業の仕事に務めました際店では幸子と呼ばれて働いておりましたがその頃より一般からも幸子と呼ばれるようになりいつのまにか通称となって終いました。

たまたま家庭の都合で他人の金銭貸借の保証人となり結果は約1年位前私は破産になって終いました。

その様なわけで今回是非、名の変更を致したいわけなのです。

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